※2022.3.7 追記・更新
i-works1.0、伊礼さん設計の建物を例に設計作法の一部を紐解いていきます。
住まい手様の価値観や希望・夢・予算が加わると、良いとはわかっていても全てをお手本にできないケースも多々ありますが、設計にはコツがあります。
ひとつでもいいなと思うものを取り入れ要点を押さえていくと、上質な空間に近づいていきますので参考にしてみてください。
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【ソーラーコム社屋&モデルハウスで開催中「i-worksと設計作法についての勉強会」】
「ホームページや書籍でその魅力は十分に分かったけれど、自分たちの予算や敷地条件に合わせてどう建てればいいのか知りたい」という疑問にお答えできるように勉強会をつくりました。
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i-works project 1.0は、さまざまな敷地に対応しやすいように正方形でプランをスタートさせました。
4間×4間は、間口7,272mm×7,272mmの真四角のプラン。
延床面積29.32坪、4~5人家族が無理なく暮らせる広さです。
まず1階の平面計画は、[浴室、洗面室、トイレ、玄関]の4機能とLDKを含む1つの空間というシンプルな構成にしています。
シンプルだからこそ、空間を機能だけではなく、多義的に使える家族の居場所までも作れるプランになっています。
次に2階には和室(畳でも板間でもOK)、使い方によっては3つの部屋として仕切ることのできる空間で子供室やフリースペースを設けています。
例えば、アレンジ案としてウォークインクローゼット、2階トイレ、サンルームなどを盛り込むことも可能です。
真ん中の丸柱を中心としたシンプルな田の字型のプラン。
住まい手様の要望、敷地条件に合わせて、東西・南北を反転させることもできるとても完成度の高い建物です。
通路のためだけの廊下をなくします。
寝室は寝るところ、ダイニングは食事をするところ、廊下は通路といった1部屋1機能の考え方にとらわれず、多義的に設計を意識します。
廊下を楽しくするには、通路をいかに生活に取り込むか。
次のプランのように空間を多義的に使うこととはつまり、通路であり、家事室であり、家族の収納であり、いろいろな機能をもたせるということなのです。
その結果、多くの方が求める「廊下(=無駄なスペース)を極力なくして広々住みたい」という要望が叶えられるようになります。
視覚的な工夫により、コンパクトな空間も広く感じます。
例えば1枚目の写真はリビングの眺め。
対角線上に窓を配置して、視線の抜けをつくっています。
言い換えると、視線の行き止まりをつくらないということ。
続いて2枚目の写真は、1階のキッチン・ダイニングから吹抜けへの眺め。
2階の居室付近まで対角線上に視線が抜けています。
ひと目で家全体のボリュームが掴めることは、心理的な安心感も得られると伊礼さんは言います。
コンパクトでありながら開放的な空間をつくることは、視線の抜けにも言えることなのです。
「2.廊下をなくす」にあるように、空間を多義的に使うには、回れる動線をつくることもポイントです。
キッチンを動線に取り込んで回遊性をもたせるだけでなく、家具を利用して回れる動線をつくることもできます。
「丸3つ」とは先達の建築家のことばです。
家の中に回れる動線が3つあるととても心地よく暮らせるという考えです。
伊礼さんに基本設計いただいたソーラーコムの社屋では、キッチン周りだけで3つ、居室と水回りを繋ぐウォークスルークローゼットもあり、4つの丸が存在します。
コンパクトな空間を美しく設え、気持ちよく住み続けてもらうには、収納計画がとても大切です。
収納が足りないと、空間に見合わない大きな棚やたんすが増えていき、本来小さくて使いやすい空間が途端に使いづらくなってしまいます。
i-works1.0では、玄関と繋がる1.5畳の外物置を配置し、その上をサービスバルコニーにしました。
外から見えないので、洗濯物を干したり、星空を眺めたり、風にあたりながら音楽を聴きたいというお子さんもいました。
建物を小さくして、質を上げる。そんな暮らしができるようになれば、心と身体の健康に繋がると思います。
建物を小さくすると、移動負担、維持管理、光熱費を抑えられるだけでなく、軒を出しデッキをつくり、外と繋がる空間をつくることができます。
庭があると隣地との距離もとれるため、窓を開放でき、かえって室内を広く使えます。
室内がコンパクトでも、外を広くできれば、空間はとても伸びやかになります。
殺風景になりがちな「建物→コンクリートの駐車場→自転車→道路」という構成に、デッキや緑を組み込むだけでガラッと印象を変えることができます。
プランをコンパクトに納めるためには、階高を下げる必要があります。
階高を下げると、階段の段数を減らすことができ、緩やかでコンパクトになります。
一般的な天井高は2300~2400mmですが、i-worksでは2100mmに抑えています。
なぜなら、高さが抑えられると縦方向の広がりがなくなり狭さが強調されるような気がしますが、実は同じ面積なら天井が高いよりも低いほうが平面は広く感じられるのです。
ソーラーコムのモデルハウスでのご案内の際には、「縦の吹抜け」ばかりではなく、「横の吹抜け」も考えて設計しましょうとお話しています。
空間を伸びやかに見せる工夫ですね。
家全体の容量が小さくなることで、冷暖房の効率もよくなります。
灯りの影も近くなり、空間に立体感が出て広く感じます。
ただし、視線が抜ける場所(窓)をつくって圧迫感を感じさせない工夫が必要です。
天井の高さだけを真似てしまう住宅会社をたまに見かけますが、それでは失敗します。
抑えられた天井が心地良いと感じるために、窓、照明、建具、家具、間取りもそれに合わせて設計しなければなりません。
ちなみにソーラーコムのキッチン・ダイニング・動線の天井は2,150mmとしていて、多くの見学者様から「低さを全く感じない」「”低い”ではなく”落ち着き”を感じる」「囲まれていてとても気持ちが安らぐ」とリアルなお声をいただきます。
大阪近郊で木の家づくりをお考えの方はぜひ体感にお越しください。
建具の高さに気を付け、垂れ壁をつくらないようにします。
そうすることで建具の向こう側の空間との連続性ができ、心理的にも広がりが生まれます。
収納の建具も天井まで作り込む、そして端、角へ寄せるなど、袖壁も最小限にメリハリをつけて整然とデザインしていくことで空間の美しさが出ます。
灯りの重心を低めにすると、落ち着きのある夜の空間をつくることができます。
必要なところだけを照らすようにして灯りを絞る。そうすることで影ができ、空間が立体的になります。
どこもかしこも明るいのぺっとした空間ではなく、立体感が生まれることで広さを感じて暮らせます。
ダイニングテーブルの上にはペンダントライト、ダウンライトも減らしてブラケットに、ソファにはフロアスタンド、デスクコーナーには間接照明といった方法でかなり良くなります。
均一でない灯りが陰影をつくり、夜には睡眠を促してくれて子どもたちも規則正しい生活を送るようになるのです。(住まい手様の実話です)
2階の和室は、座って庭の樹木が見えるように肘掛け窓にしました。
軒がかぶってくるので、包まれているような感覚になります。
ほとんどの家が2階の窓は腰窓ですが、その理由は転落防止のためです。
そこで転落防止の手摺を設けて安全面にも配慮しました。
吹抜けにつながる室内窓もポイントです。
軒が深く出た和室の腰掛窓はとても落ち着きがあって畳の間にしたくなる魅力がありますが、洋室として床を板間にすることもできます。
ダイニングテーブル・チェア、ソファ、キャビネットなど、家具の高さを抑え、ペンダントやスタンドで灯りの重心もぐっと下げてみてください。
コンパクトなプランは、空間全体の重心を下げることで、広く使うことができるからです。
頭上が煌々と明るいのではなく、足元が照らされている空間は伸びやかで落ち着きがでます。
ちなみに家具以外では、スイッチやコンセントを低めに設置しています。
置き家具は、脚付きにして床から浮かせると軽やかな印象になります。
床面が見えると、空間を広く感じる効果もあります。
i-works projectでは、ソファ、ローテーブル、ダイニングテーブル、キャビネット、テレビボードなどオリジナル家具をオプションでご用意。
建築と同時に家具も併せて検討しましょう。
一生ものの家具を世代を超えて持つ。i-worksのコンセプトです。
【i-worksと設計作法についての勉強会】↓
実際にどんな敷地ならi-worksが建つのか、どこまでのアレンジが可能なのか、基本的な情報はもちろん現実問題なども含め2時間徹底的にi-worksを掘り下げます。