お客様を連れて、住んで1年のi-worksを見学してきました。
住まい手の声、見学者の声、たくさんの貴重な意見がでましたので複数回に分けてレポートしています。
今回は第3回「縁側に人や豊かさが集まる」です。
見学日当日は大雨。普段雨の見学なら、皆さんすぐに家の中に入ってしまうのが通常です。ところが住まい手様と外観を眺めながら一言二言交わして向かった先は、軒の深くでる縁側。傘をたたみ、縁側に腰掛け、1年間の住まい心地や暮らしについて伺いました。
建築家吉村順三さんについての書籍の中で、とある哲学者が、「建築とは外をどれだけ採り入れるかでしょ?」と述べられていました。まさに伊礼さんの設計されたi-worksの良さは、この縁側空間を通して豊かな外を室内に採り入れること。そのための窓・縁側であるのです。
窓は遠くが望める場所を抜く。
都市部で緑がなくとも、空が見える場所などがおすすめです。緑を植えられると一番いいです。
空気は外気が一番新鮮(幹線道路沿いは考え方が変わります)、景色も匂いも自然を外から入れる、木々や鳥の音もそうかもしれません。あいまいな境界こそがこの縁側なのです。
縁側の軒には雨樋はつけません。雨のシトシトを楽しみ、自然・天候・季節を感じるためです。(意匠デザインでもありますが)
窓を全開にして外部空間と繋がり、バーベキューを楽しむこともあるそうです。
立派な庭やバルコニーをつくって休日のバーベキューに憧れることはありますが、1年に1度するかどうかの大掛かりなことではなく、いつもの食事を縁側でいただくという感覚なのだと思います。
緑は縁側の近いところで感じるととても落ち着きます。
緑は近い方がいいというのは、伊礼さん、荻野さんもよくおっしゃいます。軒先から滴る雨粒が跳ねてデッキにかかるようなのですが…私にはとても美しく感じました。
この日、見学者様も到着されて傘を差したまま、外観を堪能され、向かった先は縁側のある軒先。伊礼さんの言うように、内でもない外でもない「あいだ」には人・豊かなものが集まるようにできているのでしょう。そう言えば他のi-works見学会でも子どもたちが一番に向かう先が、縁側か階段でした。
上の3枚は完成当時の写真。まだ植栽がなかった頃が懐かしい
「建物・車・道路」という殺風景になりかねないものを「建物・(大きな軒やデッキ)・車・(豊かな緑)・道路」というように「あいだ(中間領域)」で緩やかに繋いであげると一気に建物はよくなります。
i-worksの間取りが希望に合わない方も、この作法を意識してみてはいかがでしょうか。
【おまけ:準防火地域のi-works】
現実問題として住宅密集地では窓に制限がかかることがよくあります。
防火サッシの網入りガラス仕様のないこの全開放窓も本来は使うことができません。
どうしても網入りを使いたくない場合は、防火認定された雨戸やシャッターを使えば、窓に制限はかかりません。それを応用して、過去に枚方の密集地でi-worksを建てた際には、雨戸を造作にして防火認定を取得。変わらずに全開放窓LWを使ったケースです。軒は梁で深く持ち出して作り込むことはできませんが、大きな庇で出来る限り縁側空間を演出していきます。
次回、「第4回:収納アレンジによってストレスを減らす」もご覧ください。
伊礼さんのお話で分かる設計作法とi-worksを建てる上での大切な話