【i-works1.0住まい手宅見学レポート】第5回:重心を下げて、落ち着きのある暮らし

  • 投稿日:2021.6.30
  • 伊礼智/i-works
  • 暮らし/健康

i-worksに入居され一年経った住まい手様宅へ見学に行ってきました。

暮らしや感想を皆さんにシェアしたいと思い複数回に分けて投稿しています。

第5回は「重心を下げて、落ち着きのある暮らし」です。

 

伊礼さんに基本設計していただいたソーラーコムのモデルハウスでも、お客様が一番に口にされる言葉が、

 

「天井の2,100mmが全然低く感じないですね!」

 

という感想です。

 

天井高を2,100mm、2,150mm、2,200mmにすることが多いのですが、まだまだ一般的には「天井は高い方が開放感があっていい」という認識かもしれません。大手メーカーが強烈な広告で打ち出しますし、どちらかと言うと物が多く狭い空間で育ってきた日本人が多く、家は広くて天井も高い方が開放的で心地よさそうだと思ってしまうのかもしれません。

 

人それぞれの感覚なので正解はないのですが、伊礼さんや、その先達建築家たちの考えは少し違います。

 

「小さな家、小さな空間で広く住む」ということを設計作法とされています。

 

設計の工夫で小さくかわいい空間に仕上げると、一気に感情に配慮された豊かな空間になります。

 

今回は、そのために大切な要素「重心を下げる」というお話です。

 

 

まず、天井下げるだけでは心地よさは生まれないということをお伝えしたいと思います。

よく、伊礼さんや先達の設計を表面的に真似した住宅でよく見るのが、天井の高さだけを下げるという設計。

実はこれだけでは、単に圧迫感のある空間になってしまいます。

天井を下げると同時に次のことも検討していかなくてはなりません。

 

・開口部(窓、ドア)

・照明計画

・家具計画

・視線計画

 

開口部(窓、ドア)は位置・高さ・サイズを考えよう

窓は壁にしっかり寄せて、壁に灯りを当て影を強調。

光の陰影が私たちの感情にいい効果をもたらします。

画像の説明文
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次に、窓の数を少なくして、一枚一枚を大きくすることにチャレンジしていきます。

まとまった壁を量を増やすことで、影と落ち着きがある空間になります。

窓の形状は、正面から枠が見えない大開口窓・縦すべり窓を多用します。

引違い窓がよく使われていますが、どうしても断熱の欠損が大きいですし、枠がゴツゴツしているので見栄えがしないことが多いです。

画像の説明文
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窓だけではありません。

ドアや収納扉もできれば造作して、床から天井まで開口部を大きくしてあげることが大切です。抑えた天井に大きな開口部なら、視覚的にもかなり広く感じます。天井の仕上げが同じだと空間が連続して見えるのも上手な設計と言えます。

既製品ドアを使うと、どうしても天井とドアの間に小さな壁ができ、これが連続性と抜けを遮ってしまうのです。(もちろんビニールシート貼りという問題もあります)

 

画像の説明文
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照明は取付高さ・位置・形状・何を照らすかを考えよう

i-worksでは照明には過度な明るさは求めません。必要最低限の照明で影を楽しむ空間とすること多いと思います。これも陰影をしっかり出すためです。

灯りの重心を下げるため、ダウンライト(小型のUFOの集団)はなるべく少なく、また食堂の照明はずっしり重みあるものを選んで、テーブル天から60cmくらいまで落としてくると空間に締まりが出ます。

 

画像の説明文
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i-works1.0京都のダイニング。影も灯りの一つとして、夜は睡眠導入に向かっていくことで健康に暮らせる

 

どこも明るくしてしまうと、空間に奥行きはなくなり、光と影の変化が少ない家になってしまいます。結果として狭い空間になってしまいます。


i-works1.0岩出。差し込む光によって身体のリズムも整う

それでも明るい照明が好きな方には、スタンドライトやフロアランプで補填することをお勧めいたします。これも灯りの重心を下げる大切な要素で、床を照らすのがいい空間であると先達建築家たちも言っています。

 

天井の重心を下げるのと同時に灯りと照明器具の重心も下げる。影を近くに感じようということでした。

 


同じくi-works1.0京都。影があるから光が際立つ。家は人生と一緒のように感じる。影も大切にしたい

 

家具は高さも重視しよう

天井を下げると同時に、家具の高さも少し低めにしてあげると居心地が良くなります。

ローテーブル、ローソファは好みがあると思いますが、造作でも市販でも少し低いものなら手に入ると思います。ダイニングテーブル、キャビネット、カウンター、ソファ、テレビ台などで工夫してみてください。

 


i-works1.0京田辺。住まい手は2100mmの天井に合わせてロースタイルを新調された


i-worksではないが、伊礼さん設計の豊中の家。奥村家具も然り、ソファ、テレビ台も造作で重心を下げている


計算された造作家具は、単に価格で諦めるには惜しいほど、一生涯の暮らしを彩ってくれる


ロースタイルはまるで床座のような落ち着き。ダイニングもかなり低めで新調された

視線の先に何を望むかを考えよう

i-worksでは視線の抜けを意識した窓配置が特徴的です。玄関、キッチン、リビング、ダイニング、廊下、様々なところで行き止まりを少なく、また柔らかな灯りと影を入れるための配置になっているのです。

 

そんな窓から何を望むか、ここが重要です。

配置計画ということになりますが、「窓は遠くが見えるところを抜く」というのが作法になります。遠くとは、緑、空です。

 

画像の説明文
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都会や住宅密集地でも決して諦めてはいけません。

隣地とのスペースが狭い場合でも緑を植えて視線を遮り、お隣さんにも景観をお裾分けしてあげることもできます。

 


隣家の水回りがそばにあるi-works1.0枚方。山採りしてきた植栽を植え、LWの開口部を豊かにした。木々の成長が楽しみだ

 

抑えられた重心と大きな吹抜けによってメリハリができる。タテの吹抜けはこれで完成するのですが、難しいのがヨコの吹抜け、つまり窓です。

低い重心が活きてくるように、このヨコの吹抜けも植栽計画、配置計画と一緒に考えてあげると、窓が一枚の絵画のように感じられるのです。

 

画像の説明文
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私たちも日々設計の奥深さを勉強中です。

今回の住まい手様が「伊礼さんのi-worksは本当によく考えられていますね」と何度もおっしゃったのは、こういった窓の計画、重心の計画があるからなのだと思います。

 

その上で1点、気を付けておかなければならないことがあります。

伊礼さんは図面や納まりを書籍化され、今や建築素人の方も勉強ができるようになっています。だからこそ人気にあやかったコピー建築も増え、「何か違う…」という建物が増えてきているのも現実です。実際に、今回の住まい手様も元々参考にと伺った家が、そういった「i-worksに似てるけど何か違う…」という工務店だったと言います。こういった失敗をしないために、設計作法を理解した上でアレンジなどに繋げていける工務店を選ばれることが何より重要なのだと思います。

 

次回、「第6回:玄関アプローチは小さくかわいく」もお楽しみに。

 

伊礼さんのお話で分かる設計作法とi-worksを建てる上での勉強会

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