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【豊中市】陽の木の家 平屋の二世帯
今回の住まい手様は子育てを終えられ、親御さん・ご兄妹との3世帯のような暮らしをされるご家族です。
ここ数年でお母さん・お父さんどちらかとの同居や今回のようなご依頼がとても増えています。
世代は関係なく、人が住んでいて気持ちのいい木の家がどうあるべきなのか、どう計画していくべきなのか、完成写真を通してご覧いただこうと思います。
平屋+ロフトを希望される方や、子育て中の方にもぜひご覧いただきたいと思います。
そんなご家族が選択したのが平屋の住まい。
元々馴染みのある豊中のエリアに桜並木がとても綺麗な土地を見つけられました。
角地とはいえ三角の変形地ということで、真四角ではない変形の平屋としました。
建物形状やプロポーションのデザインだけではなく、予算・法規的な制限・機能などと照らし合わせて決めていきました。
ブログなどでも、「限られた予算で質を上げるためにはまず建物を小さくすることを考えましょう」と言ってみたり、「物を整理しましょう」と言ったりしていますが、あくまでも価値観と十人十色の家づくりを大切にしているので、万人にとっての正解ではありません。
今回のような複数名での大人の暮らしとなると、「しっかりとしたプライベートとパブリックの両立」が求められるコンセプトとなりました。
まず広間は食卓と居間が大きなひと繋がりとなった最も心地よい空間です。
窓と天井については後の項目で述べますが、写真を見るだけで窓の外の景色を主としたほのぼの空間であることがイメージできます。
床はいつもの柔らかい杉ではなく、白太の統一感が美しい桧になっていて大人の空間という感じがします。
杉に比べ硬く少しヒンヤリしていますが、床下は全館暖房の空間なので決して底冷えすることはありません。
暖気がじんわりふきあがってくる窓辺のベンチに腰掛け、のんびり過ごす日常が目に浮かびます。
そしてプライベートのための4つの個室です。
1階に3部屋、吹抜けと繋がる2階ロフトに1部屋あります。
方角、景色、板間か畳間かなど、それぞれに個性があって、長い廊下をつくるのも悪くないと思える設計でした。(コンパクトな家の場合は個室や廊下を増やすと無駄なスペースが増えるのでほどほどに)
中でも広縁を用いた旅館の一室のような和室があります。一枚の大きな製作建具を通して居間と繋がることができ、2帖の広縁から桜を眺めたり、思い入れのある和箪笥(たんす)を置いたりできるのです。
安心してプライベートが守られている場所があるからこその大広間が活きてきました。
続いてソーラーコムのyoutubeでもアクセス数が多く、見学者様が最も体感したいこと、天井についてです。
この住まい手様がi-works3.0の完成見学会にお越しいただいたのをきっかけに、低い天井と高い天井のメリハリある空間を実現する方向に動いていきました。
キッチンは2150mm、居間は2600~4100mmの高さで、落ち着きと開放感を持ち合わせています。
写真で伝わりにくければぜひソーラーコムの社屋・モデルハウスにお越しください。 i-works1.0、2.0などと同じ仕様にしています。
窓の役割は断熱・気密だけではなく、景色・音・香り・光・風、この窓を通して家の中を豊かにしてくれます。
西日が傾いてきたら伊礼ガラリで光を絞り、暑さ寒さが厳しいときには障子が部屋の断熱効果を上げつつ、柔らかな灯りを取り込む。
春と秋には全開放して一枚網戸だけでオープンに過ごすこともできます。
ひとつの窓でいくつものシーンが楽しめるのは、住んで分かる癒しなのです。
今回は桧の無節を選んでいただきました。和風がお好みの方や、空間デザインをスッキリ見せたい方にはお勧めです。赤身と白太の差がない分美しく見えます。
【杉】:柔らかく、温かい。代わりに、傷がつきやすい(だんだんと飴色に変化するに伴い風合いと馴染みが出る)
【桧】:水に強く、白太でスッキリ見える。代わりに、硬く、杉より冷たい(材料が冷たくても高い建物性能と全館暖房で暖かく快適に暮らせる)
子育て世代の方・予算重視の方・足腰に不安のある方は杉がお勧め
なるべく傷をつけたくない方・デザイン重視の方・和風好みの方は桧がお勧めです。
製作と既製品のバランスはとても大切です。家はデザインだけでなく、機能や価格も大きな決定要素になるからです。
家の中で「ここは予算を投じても製作!」という箇所を決めておくことが大切です。
その中で今回は建具(室内扉)について触れていこうと思います。
居間の風景がスッキリ見えるひとつの方法として、木製建具を製作していることが挙げられます。
和室と繋がる建具を製作にし、垂れ壁を作らないことで見た目が軽やかになります。
製作建具は確かに予算がかかります。しかし一度使ってみると視線は抜け、空間が広く見え、低い天井とのメリハリも生まれるので魅了されます。
建具ではありませんが、居間と階段を緩やかに仕切る格子も住まい手様の要望です。
開放しすぎず閉鎖しすぎず、格子は少し重たくも見えますが、空間を緩やかに仕切ってくれるものでもあります。
ソーラーコムの標準仕様でもあるそとん壁、軒裏・戸袋を板貼りして自然塗装をかけています。
中だけでなく外にも自然の物を使うと、ご近所さんや通行人もつい足を止めたくなるかわいい家になります。
左官技術と塗装技術、下地を用意する大工の腕が結集している外観となりました。
建坪35坪で縦長の形状、さらには多くの個室、水回りには室内の温度差を解消するため全館空調が効果的です。
しかしシステムだける頼る設計では内部結露が起こったり、思ったように空調が効かない、温かいけど空気が悪い、ということになってしまうことがあります。
したがって全館空調をしっかりと効かせるには、確かな家の性能とダクティング計画、基礎の形状が重要になってきます。
2世帯や成長されたお子さんとの同居では、プライベートが重視されていきます。
入浴時に洗面台を使えないということを避けるためにセパレートにすることもしばしば。小さくても分けてあげると支度もスムーズになります。
中霧島壁の白、床・天井の茶を基調とした中に差し色となっているペンダントライトがあります。
これは住まい手様の大切な手持ち家具で、有名家具屋さん「TRUCK」で製作されたものらしく、20年も時を共にしているそうです。
今は武骨なアイアンや皮の製品が目立ちますが、この照明なら木の家にもとてもよく合っています。
高い天井の吹抜けから吊り下げるためコードに手を加え重心をしっかり下げ取り付けました。通りで灯りが上品なわけです。
住まい手様は窓から見える景色をとても楽しみにされています。
春には満開の桜の写真に差し替えてみようと思います。
四季を感じたいから家の中を寒くするのではなく、暖かく涼しい家の中で四季を感じられる窓をつくること。
これが健康に長生きできる最も重要なことだと言えます。
今家づくりを考えておられる方も、身体の中に入れる空気(食べ物の20倍の重さ)が新鮮であること、これを意識して家づくりをスタートしてみてください。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
こちらも読み物も設計の参考にしてみてください。
どこでも明るい方がいい?必要なところだけが明るいのがいい?「少なさ」という豊かさ 【照明の数編】の記事を読む
高い性能数値では測れない心地よさがある、「性能だけでは快適な家にはなりません」の記事を読む
設計・施工 | 設計・施工 :ソーラーコム |
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建物概要 | 構造:木造2階建て 工法:在来軸組工法 |
敷地面積 | 200.62㎡(60.69坪) |
建築面積 | 118.42㎡ |
1階工事床面積 | 117.87㎡(35.66坪) |
2階工事床面積 | 55.48㎡(16.78坪) |
延床面積 | 173.35㎡(52.44坪) |
外装 | 外壁材:そとん壁スチロゴテ仕上げ |
内装 | 主要構造材:梼原杉 床材:東農桧(上小材) 内装:中霧島壁 サッシ:アルミ樹脂複合、LW 浴室:フルユニットバス |
完成 | 2021年12月 |
システム | 全館空調「OMパッシブエアコン」 |